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#読書メモ

読書メモ『コンテキスト思考』

杉野幹人、内藤純 著『コンテキスト思考』の読書メモ。コンテンツ思考に対するコンテキスト思考の概念と実践について

大まかな内容

  • 「コンテンツ」と「コンテキスト」、「コンテンツ思考」と「コンテキスト思考」の対比的説明
  • 「コンテキスト思考」を支える3Sフレームワークについての説明
  • 「コンテキスト思考」の基礎となる能力について説明

印象に残った箇所・感想

コンテンツ思考とコンテキスト思考の関係

コンテンツ思考の限界を示すと共にコンテキスト思考の重要性を示す記述が中心ではあるが、一方で”それは「コンテンツ思考」が必要ないということではない”とも述べている。1

つまり、コンテキスト思考の立ち位置は「ポスト・コンテンツ思考」のようにコンテンツ思考を乗り越える、あるいは上書きするものではない。 本文では、3Sフレームワークを説明するためにいくつかの例を挙げているが、その一つの中でも「コンテンツ分析を手がかりとして、コンテキストを見つける」というアプローチを、一つの便利なテクニックとして評価している。2

コンテンツとコンテキストの関係に優劣や対立を設けるのではなく、あくまで順序の関係(コンテンツ分析を基礎として、コンテキスト思考を成立させる材料を得ている)として定めていることになる。 本書ではコンテキストを「言語化されていないもの、暗示的なもの」として表現しているが、何の足がかりもなくそうしたものを捉えるのは難しいように思う。その意味で、コンテンツにその足場作りとしての地位を与えているのは、妥当そうに思う。

コンテキストの不在について

本書ではコンテキストという非言語的・暗示的な概念についてのアプローチを語っているが、その一方で、求めるような種類のコンテキストが存在しない、という可能性についても言及されている。

もう一つ留意する必要があるのは、「相関関係」や「対立関係」の裏側には必ずしも「因果の関係性」や「補完の関係性」が存在するわけではないということである。3

コンテキスト思考なるものを前面に押し出しつつ、しかし求めるコンテキストが存在しないケースについて言及しておくのは、(相関関係と因果関係の混同回避をはじめとして)基本的なことだが、ある種の誠実さとして重要なポイントではあると思う(ある種の万能論、確実な技法として騙らないという点で)。

3Sフレームワークの説明について

とりあえず、全体的に命名は強引。「3S」という名称を決めてから考えたのではないかと思うぐらい強引。いちいちメタファとその意味するところをマッピングしながら読まなければならないという点で、この命名は端的に失敗しているように思う。

一方で、その説明はいくつか共通の具体例を踏まえつつ行われており、その実践についてもある程度の具体性は伴いながら(非言語的な対象を扱う関係上、どうしても抽象的な箇所も混ざるものの)行われている点は、評価したい。 理論として強靭とは言い難いところがあるが、そもそもの「具体的、言語的なものにとらわれない」という目的へ向けての1アプローチとして、意義がある内容になっていると思う。

個人的には、Soilの「価値観ポートフォリオ4」とSunの「起承転結5」における説明・図示がお気に入り。

全体の感想

いわゆる「自己啓発本」というのはこういう種類のものなのだな、という感想。 理論としての強靭さ・精確さは望むべくもないところではあるが、一つの考え方・アプローチとしては参考になるという向きはあった。

「物理的・言語的なものにとらわれることの限界」というのに目を向けた点は、個人的に積極的に評価したい。

Footnotes

  1. 杉野幹人、内藤純(2009)『コンテキスト思考 論理を超える問題解決の技術』(東洋経済新聞社) p.32

  2. 杉野幹人、内藤純(2009)p.94

  3. 杉野幹人、内藤純(2009)p.93-94

  4. 杉野幹人、内藤純(2009)p.131

  5. 杉野幹人、内藤純(2009)p.164